東野圭吾ミステリー おすすめ本・DVD紹介TOP > 東野圭吾 文庫本 > 白夜行 東野圭吾著

白夜行 東野圭吾著

 

白夜行 東野圭吾著


原作:東野圭吾

集英社(文庫本)

単行本はこちら







前作「秘密」で、温かくて切ない物語を紡いだ東野圭吾が、今回の「白夜行」では読む者の心を冷え冷えと切なくさせる。


「白夜行」は1973年に起こった質屋殺しがプロローグ。


最後に被害者と会った女がガス中毒死して、事件は迷宮入りする。


この物語「白夜行」の主人公は、質屋の息子と女の娘だ。


当時小学生だった二人が成長し、社会で“活躍”するようになるまでを、世相とともに描ききる。


2人の人生は順風満帆ではなく、次々忌まわしい事件が降りかかる……。


「白夜行」は当然ミステリーだから謎が隠されているわけだが、真相は途中で暗示されてしまう。


しかし謎の存在などどうでもよくなるほどのスケールの大きさが読後に残る。(石飛徳樹)




レビュー1


「白夜行」の犯人は最初から読み手にわかるような手法ですが、伏線がたくさん張られているので気が抜けず、展開に目が離せなくなりました。


東野氏は後のエッセイで、ある受賞作品の選考員にトラウマの一言で片づけられたことを残念がっています。


「白夜行」の犯罪の根底はトラウマと言ってしまえるほど単純なものではない気がします。


雪穂と亮司の心理状況は書かれていませんが、あらゆる箇所で2人の密な関係を示すものがあります。


例えば小学生の雪穂が作った小物入れにR.Kと刺繍していることや、彼女が大阪にオープンさせた心斎橋店のR&Yという店名など...


「白夜行」の冒頭から出てくるササガキという刑事がいい味だしてます。


後半はどういう終わり方をするのかハラハラしましたが、最後もこのおやっさんが結末を見届けてくれてほっとしました。


男たちの下劣な欲望で傷つけられた雪穂を亮司が身を粉にして支え続ける。


読み手の想像力や恋愛経験によっても感じ方がさまざまな作品だと思います。


レビュー2


「白夜行」は総ページ850程度、全13章からなる物語。


ライトノベルなら3冊分はあるボリューム。


主人公の雪穂と亮司の小学校時代から19年後までが淡々と語られる。


なぜ淡々かというと、主人公二人の内面心理の描写が全くなく、他の登場人物の目を通じてしか二人をうかがい知ることができないからだ。


加えて、物語はある殺人事件に端を発するが、犯人や犯行方法は途中で暗示され、焦点は事件の解明ではなく今後の展開に移っていく。


だからこの物語「白夜行」はミステリーというよりは叙事詩だ。


読み進めていくごとに、二人の関与がほのめかされ、そして徐々に真相が明らかにされていくにつれ、背筋の凍る思いが募っていく。


ノワールの傑作と評されることにもうなずける。

だが、真に驚くべきことは、とうとう最後まで二人の内面が一切明かされないことだ。


稀代の悪女と犯罪の天才。


二人はどのように結ばれ、何を目指したのか。


いや、亮司はなぜ雪穂の影で在り続けようとしたのか?


これに対して雪穂は亮司に何を与えたのか?雪穂は亮司を愛していたのか?二人に潜む闇はあまりに深く、ありきたりの想像や感情ではとうてい推し量れるものではなかろう。


しかし、こうした思いに対する答えはない。


ないのである。


だから「白夜行」読後もふとした拍子に雪穂と亮司の物語に思いを馳せてしまう。


まさにいつまでも余韻が消えないのだ。


なるほど、これが東野ワールドか・・・。




<<「白夜行 東野圭吾著」の詳細はこちら>>



 

東野圭吾 文庫本記事一覧

白夜行 東野圭吾著

白夜行 東野圭吾著原作:東野圭吾集英社(文庫本)単行本はこちら 前作「秘密...

秘密 東野圭吾著

秘密 東野圭吾著原作:東野圭吾文藝春秋(文庫本)単行本はこちら妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の...

流星の絆 東野圭吾著 新風賞受賞

流星の絆 東野圭吾著原作:東野圭吾講談社(文庫本)単行本はこちら何者かに両親を惨殺された三兄妹は、流れ星に仇討ちを誓う。14...

容疑者Xの献身 東野圭吾著 直木賞受賞

容疑者Xの献身 東野圭吾著 直木賞受賞作原作:東野圭吾文藝春秋(文庫本)単行本はこちら ...

放課後 東野圭吾著 江戸川乱歩賞受賞

放課後 東野圭吾著 江戸川乱歩賞受賞原作:東野圭吾講談社(文庫本) 校...

悪意 東野圭吾著

悪意 東野圭吾著原作:東野圭吾出版:講談社(文庫本)発売:2001/1/17 ...

赤い指 東野圭吾著

赤い指 東野圭吾著原作:東野圭吾出版:講談社(文庫本)320ページ発売:2009/8/12「赤い指」単行本はこちら ...

夜明けの街で 東野圭吾著

夜明けの街で 東野圭吾著原作:東野圭吾出版:角川書店(文庫本)391ページ発売:2010/7/24「夜明けの街で」単行本はこちら ...

ダイイング・アイ 東野圭吾著

ダイイング・アイ 東野圭吾著原作:東野圭吾出版:光文社(ペーパーバック)408ページ発売:2011/1/12「ダイイング・アイ」単行本はこちら ...

むかし僕が死んだ家 東野圭吾著

むかし僕が死んだ家 東野圭吾著原作:東野圭吾出版:(文庫本)314ページ発売:1997/5/14 ...

さまよう刃 東野圭吾著

さまよう刃 東野圭吾著原作:東野圭吾出版:角川グループパブリッシング(文庫本)499ページ発売:2008/5/24 ...

どちらかが彼女を殺した 東野圭吾著

どちらかが彼女を殺した 東野圭吾著原作:東野圭吾出版:講談社(文庫本)356ページ発売:1999/5/14 ...

幻夜 東野圭吾著

幻夜 東野圭吾著原作:東野圭吾出版:集英社(文庫本)792ページ発売:2007/3/20 ...

手紙 東野圭吾著

手紙 東野圭吾著原作:東野圭吾出版:文藝春秋(文庫本)428ページ発売:2006/10「手紙」単行本はこちら ...

使命と魂のリミット 東野圭吾著

使命と魂のリミット 東野圭吾著原作:東野圭吾出版:角川書店(角川グループパブリッシング)(文庫本)452ページ発売:2010/2/25「使命と魂のリミット ...

11文字の殺人 東野圭吾著

11文字の殺人 東野圭吾著原作:東野圭吾出版:光文社(文庫本)332ページ発売:1990/12 ...

ブルータスの心臓―完全犯罪殺人リレー 東野圭吾著

ブルータスの心臓―完全犯罪殺人リレー 東野圭吾著原作:東野圭吾出版:光文社(文庫本)362ページ発売:1993/08 ...

回廊亭殺人事件 東野圭吾著

回廊亭殺人事件 東野圭吾著原作:東野圭吾出版:光文社(文庫本)308ページ発売:1994/11 ...

探偵ガリレオ 東野圭吾著

探偵ガリレオ 東野圭吾著原作:東野圭吾出版:文藝春秋(文庫本)330ページ発売:2002/2/10 ...


 
スマートフォン